この記事を読むと分かること
・グリコーゲンの回復が重要な理由
・グリコーゲンの回復に必要な糖質量
・吸収効率を上げる方法
・1日に必要な糖質、三大栄養素の推奨量
「運動後の”糖質の摂取”が大事!!」
このようなことは、トレーニーなら百も承知だと思います。
しかし、『どれくらいの量・どの時間に・効率の良い方法』まで理解している人は少ないと思います。
この記事では、「運動終了直後の糖質摂取」と「カーボアップ」で、グリコーゲンの吸収率を最大化するための方法を徹底解説しています。
記事を読むことで、最も効率の良い方法で今後、糖質摂取・カーボアップを行うことができるようになるでしょう。
※参考論文のリンクも記載しておくので参考にしてください。
■グリコーゲン超回復を最大化する方法
筋肉や肝臓のグリコーゲンが十分に回復していない場合、エネルギー不足となり、パフォーマンスの低下・トレーニングの質の低下・糖新生(筋肉を分解してエネルギーにする)が起こります。
そのため、運動後はすみやかにグリコーゲンを回復させることが重要です。
◎グリコーゲン超回復に必要な「糖質」の量
アメリカスポーツ医学会(ACSM)による最新の「スポーツ栄養と競技パフォーマンスに関する公式声明」では、
体重1kgあたり”1.0〜1.2g”程度の糖質を”毎時間”摂取することが推奨されています。
※体重60kgの人なら『1時間に1回60〜72gの糖質を摂取』
参考論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26891166/
これは、糖質の摂取量が1時間あたり1.0〜1.2g/kg程度のところで、筋グリコーゲンの回復率が最大になり、それ以上摂取しても効果を得られないためです。
参考論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12617691/
1時間に1.0〜1.2g/kgの糖質の摂取は大変な作業になるので、吸収の”効率を上げる”必要があるでしょう。
◎グリコーゲン回復の「効率」を上げる方法
グリコーゲンの吸収効率を上げる方法は、
『タンパク質と一緒に摂取すること』です。
糖質に加えて、タンパク質”0.4g/kg/時”を同時に摂取することにより、糖質”0.8g/kg/時”であっても”1.2/kg/時”と同程度の筋グリコーゲンが回復することが報告されています。
これは、血中のインスリン濃度が関係しています。
参考論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10871568/
◎インスリンの分泌に関与しているのは糖質だけではない?!
「糖質」を摂取して血糖値が上がると、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌されます。
また、「タンパク質」や「脂質」を摂取したときには、十二指腸や小腸から『GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)』や『GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)』などの、消化管ホルモンが分泌されます。
これらは、膵臓のβ細胞に作用して、”高血糖時にインスリン分泌を促進”することが知られています。
※血糖値が低いときはインスリンは分泌されない。あくまでも”高血糖時においてのみ”作用する。
つまり、糖質と同時にタンパク質(脂質も含む)を摂取した場合には、インスリン分泌が増強され、筋グリコーゲンの回復が促進するということです。
参考論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1601794/
◎運動終了直後の2時間が大事
1988年Ivy教授らの研究がグリコーゲンの回復の最も有名な研究です。
長時間の自転車運動を行い、”運動直後”と”終了2時間後”それぞれに糖質を摂取させ筋グリコーゲンの回復率を比較しました。
結果は、”全く同じ量の糖質”を摂取させたにも関わらず、”運動終了直後”に摂取したグループは”終了2時間後”よりも、筋グリコーゲンの回復率が”2倍近く高かった”ことが明らかになっている。
つまり、グリコーゲンの回復を最大化したい場合は、運動終了直後、または運動中から糖質を摂取することが重要ということです。
参考論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3132449/
◎運動直後にグリコーゲンの回復率が上がる3つの理由
①GLUT4によるもの
→ 筋肉の収縮によりGLUT4が活性化
②血流量によるもの
→ 運動終了直後は”筋肉内の血流量”が多いため、その分、細胞内へ栄養が送り込まれやすくなる
③小腸での吸収率アップによるもの
→ 運動終了直後では、消化・吸収能力、特に”胃から腸への排出速度”は低下するが、”小腸での糖の吸収効率”は安静時よりも高まる
◎効率が良いのは運動終了後30分以内?!
現在のところは、運動終了何分後まで吸収の効率が良いのか、明確になっていません。
国際スポーツ栄養学会(ISSN)による公式見解では、「運動終了後30分以内に摂取すべき」と記されています。
参考論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3132449/
しかし、最近の動物実験では、「運動終了後30分では”すでに筋グリコーゲンの回復率が低下”している」ということも示唆されているので、もっと早い時間(運動中)から摂取すべきかもしれません。
参考論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3132449/
◎時間をかければ筋グリコーゲンは回復する
試合やトレーニングが”次の日以降”になる場合は、回復率が低下するものの、時間をかければ十分にグリコゲーンを回復できます。
そのため、無理をして終了直後に糖質を摂取する必要はありません。
運動終了直後の糖質摂取が必要な場面は、”連続して試合があるとき”です。
※毎日トレーニングを行う人は、運動終了直後(運動中)の糖質摂取は重要
■アスリートが1日に必要な『糖質』の推奨量
✔国際オリンピック委員会(IOC)の発表
◇トレーニング量別の「推奨”糖質”摂取量」
トレーニング量 |
体重1kgあたりの推奨”糖質”摂取量 |
|
軽め・少なめ |
提供度の運動もしくは技術練習 |
3〜5g/kg/日 |
中程度 |
1日1時間程度の運動 |
5〜7g/kg/日 |
多い |
1日1−3時間の中〜高強度の運動 |
6〜10g/kg/日 |
とても多い |
1日4〜5時間の中〜高強度の運動 |
8〜12g/kg/日 |
■アスリートが1日に必要な『三大栄養素』の推奨量
◇アスリートのための「三大栄養素の摂取量・摂取比率」
1日の総エネルギー消費量 |
||||
4,500kcal |
3,500kcal |
2,500kcal |
1,600kcal |
|
タンパク質 (エネルギー比率) |
150g (13%) |
130g (15%) |
95g (15%) |
80g (20%) |
脂質 (エネルギー比率) |
150g (30%) |
105g (27%) |
70g (25%) |
45g (25%) |
糖質 (エネルギー比率) |
640g (57%) |
500g (58%) |
370g (60%) |
220g (55%) |
参考:https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/k3-34.pdf
■まとめ
今回は、カーボアップの極意ということで、運動終了後のグリコーゲン超回復を最大化する方法を解説しました。
グリコーゲン超回復の知識があることで、スポーツやボディビルのような筋肉系の競技で最高のパフォーマンスを発揮することができます。
上記で学んだことを生かした、試合当日は”最高のパフォーマンス”を発揮しちゃってください!
要点まとめ
- グリコーゲン超回復には、体重1kgあたり”1.0〜1.2g”程度の糖質を”毎時間”摂取することが推奨される
- 糖質に加えて、タンパク質”0.4g/kg/時”を同時に摂取することにより、筋グリコーゲンの回復が促進される
- ”運動終了直後”の糖質摂取は、”終了2時間後”よりも、筋グリコーゲンの回復率が2倍近く高い
- 回復率が低下するものの、時間をかければ十分にグリコゲーンを回復できる
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が、あなたのお役に立つことができたのなら幸いです。