栄養の入り口は「口」ではなく「小腸」
この記事を読むと分かること
- 小腸の構造
- 十二指腸の働きとホルモン分泌
- 空腸・回腸の働き
- 食べても体重が増えない人の特徴
「腸は、第二の脳」
このように言われるくらい「腸」は大事な臓器です。
腸の機能が低下すると、
免疫力の低下、代謝の低下、下痢・便秘など、さまざまな体の不調に繋がります。
しかし、「腸」のメカニズムを知ることで、これらを防ぐことができ、腸の働きを最大化することができるでしょう。
この記事を読めば、「小腸の構造・働き」を理解することができます。
■小腸の構造
参考:https://www.asahi.com/relife/article/12277263
- 十二指腸
- 空腸
- 回腸
これらを合わせて「小腸」と呼んでいます。
小腸の長さは、約6m(消化管の約8割)です。
また、小腸と大腸の間には「回盲弁」があり、逆流しないようになっています。
◎食物が入ってきたときの流れ
食物が入ってくると「胃」から分泌する「胃酸」によって、食物をおかゆ状にします。
そのあと、おかゆ状のものが「十二指腸」で「胆汁」などの働きにより、更に細かく分解されます。
そして、「空腸・回腸」で一番細かい形にまで分解され、体内に吸収されるという流れです。
また、小腸で吸収されなかったものは「大腸」に運ばれていきます。
上行結腸、横行結腸、下行結腸、エス状結腸、盲腸、虫垂、直腸を通り、最後に「便」として排出されます。
■小腸の働き
小腸は胃から送られてきた消化物をさらに細かく分解し、柔毛を通して体内へ送り込む、”栄養の入り口”の役割を果たしています。
また、食事の中にはアレルギー性のものなど、”体にとって良くないもの”も含まれます。
小腸の免疫システムを通り抜けることで、体に必要ないものが撃退されて、使えるものだけ吸収されるのです。
◎タンパク質を吸収するときの流れ
タンパク質を口から摂取した場合、そのままの形だと体内に吸収することはできません。
タンパク質は、50個以上のアミノ酸からできています。
それを1〜3個のアミノ酸まで分解して、やっと小腸の柔毛で吸収されるのです。
そして、アミノ酸として吸収されたあと、血液に反映され、肝臓に届けられ、代謝が起こります。
これが、タンパク質が吸収されるまでの流れです。
◎消化に必要不可欠な「腸液」
「腸液」は、消化をするために必要不可欠なものです。
なぜなら、腸液の消化酵素が栄養に触れることにより、”細かく吸収できる形”にまで分解されるからです。
- タンパク質 → アミノ酸
- 糖質(デンプン)→ ブドウ糖
- 脂質 → 脂肪酸とグリセリン
腸液(消化液)が働くことにより、上記のように体内に吸収される形まで分解することができるのです。
◎腸液の分泌
十二指腸では、「ブルンネル腺」から腸液が分泌します。
空腸・回腸では、「小腸腺」から腸液が分泌します。
腸液の分泌量は、1日に1,500〜3,000mlです。
◎腸液がアルカリ性の理由
腸液は、基本的に”アルカリ性”となっています。
なぜなら、胃で消化された食べ物は「胃酸により”酸性”になっているため」です。
これを中和するために、膵液はアルカリ性になっているのです。
また、腸液は食後2時間後くらいから分泌が始まり、一定時間(長いと4〜5時間)分泌されます。
■十二指腸の働きとホルモン分泌
「十二指腸」は、”指を12本並べたときの長さ”に近いことが由来でこの名前になりました。
実際は”25cm程”なので、指を12本並べた長さより長いです。
胃で消化された食べ物が十二指腸に入ると、ホルモンが分泌します。
このホルモン分泌がトリガーとなり、「膵液」や「胆汁」をなどの消化酵素を分泌し、食べ物をさらに細かく分解し、空腸に送るのです。
ここからは、”消化酵素の分泌のトリガー”となるホルモンを”3つ”紹介します。
- セクレチン
- コレシストキニン
- 胃液分泌抑制ペプチド
①セクレチン
セクレチンは、酸性になった食物が十二指腸に入ってきたときに反応して分泌するホルモンです。
✓セクレチンの働き
- ”十二指腸粘膜”から分泌され、胃液の分泌を抑制する
- 胃液の分泌を止めたら次は、膵液の分泌を促進する
膵液には、タンパク質を分解する「トリプシン」「キモトリプシン」などがあります。
②コレシストキニン
コレシストキニンは、脂質に反応して分泌されるホルモンです。
✓コレシストキニンの働き
- 十二指腸粘膜から分泌され、胆汁や膵液の分泌を促進する
- 脂質の乳化に寄与して、脂質を吸収しやすくする
脂質(脂肪酸)は、”脂溶性の物質”なので、乳化して親水性をもたせる必要があります。
親水性をもたせることにより、小腸から吸収しやすくなるのです。
胆汁の中には、乳化の役割がある「胆汁酸」が含まれており、脂質を吸収しやすくしてくれます。
また、脂質が入ってきてもコレシストキニンが分泌されない人もいます。
このような人は、脂肪を吸収しずらく太りにくい、エネルギーにもなりにくい人です。
要するに、コレシストキニンが分泌しないと、脂肪が吸収しにくくなるということです。
③胃液分泌抑制ペプチド
ブドウ糖や脂質が入ってくると分泌するホルモンです。
✓胃液分泌抑制ペプチドの働き
- 胃液の分泌を抑制する
胃液分泌抑制ペプチドもセクレチンと同じように、胃液の分泌を促進する働きがあります。
しかし、セクレチンは”酸性になったとき”に分泌されるのに対して、胃液分泌抑制ペプチドは”ブドウ糖や脂質”に反応して分泌するホルモンです。
◎その他のホルモン
✓ソマトスタチン
ソマトスタチンは、胃、小腸、膵臓を経由します。
インスリン、セクレチン、グルカゴンなどの分泌を促進します。
✓インクレチン
インクレチン(GLP-1)は、小腸を経由します。
GLP-1は、インスリンの分泌を促進する働きがあります。
✓グレリン
グレリンは、胃を経由します。
体に栄養が少なくなってきたときに、食欲を増進するために分泌されます。
■空腸・回腸の働き
参考:https://www.chugai-pharm.co.jp/index.html
小腸の中には「腸絨毛」という、突起みたいなものがあります。
このような突起があることにより、表面積が増えて吸収効率が上がります。
※写真いちばん上
柔毛の周りには「パイエル板」というものがあります。
パイエル板は栄養を吸収するだけでなく、体に不必要なもの(ウイルス・炎症の元になるもの・菌類など)を撃退してくれる働きがあります。
※写真いちばん下
また、パイエル板の周りには、B細胞、T細胞などの免疫細胞が集まっています。
パイエル板は、わざとウイルスを引きつけて、この免疫細胞で撃退をしているのです。
そして、パイエル板で吸収された栄養素は、肝臓に運ばれて、必要なタンパク質に作り変えられます。
吸収されなかった残りは、大腸に運ばれ便として排出されます。
◎空腸・回腸のエネルギー源
人間の体は、糖・脂質・クレアチンリン酸から作られる「ATP」をエネルギー源にしています。
しかし、小腸のエネルギー源は「グルタミン」というアミノ酸です。
グルタミンは、腸の唯一のエネルギー源になります。
ですので、グルタミンが少なくなってくると、小腸の働きが悪くなってきます。
◎小腸は副交感神経が優位のときに働く
小腸は、副交感神経が優位のときに活動する臓器です。
ですので、ストレスや睡眠不足などで、交感神経が優位になっていると、小腸の働きが悪くなってしまいます。
腸の働きが悪くなったときは、食物繊維不足を疑うことが多いですが、グルタミンを摂取することにより解決する可能性もあります。
■食べても体重が増えない人の特徴”3選”
「たくさん食べているのに体重が増えない」
このような人は、大きく”3つ”の特徴があります。
- 消化酵素が不足している
- 乳糖不耐症
- 窒素バランスと消化酵素反応
①消化酵素が不足している
十分な栄養を摂取しているのに体重が増えない人は、消化酵素が不足している可能性があります。
食物を吸収するまでには、たくさんの消化酵素が働いています。
たとえば、タンパク質なら
ペプシン(胃液)
↓
トリプシン・キモトリプシン(膵液)
↓
アミノペプチダーゼ(腸液)
これらの消化酵素が反応して分解・吸収されるのです。
人によっては、消化酵素が弱くて消化・吸収できない方がいます。
そんな方は、消化酵素を摂取すると良いでしょう。
オススメは、消化酵素を含むフルーツを摂ることです。
✓タンパク質分解酵素
- 「パパイン」:パパイヤなどに含む
- 「ブロメライン」:パイナップルなどに含む
- 「アクチニジン」:キウイなどに含む
②乳糖不耐症
乳糖不耐症とは、「乳糖」を含むものを摂ると、消化不良を起こす症状のことです。
牛乳を飲むとお腹を壊してしまう人は、乳糖不耐症になります。
乳糖(ラクトース)の消化酵素は「ラクターゼ」です。
小腸内に消化酵素のラクターゼを持っていないアジア人は多く、成人以上の85%が持ちにくいと言われています。
ですので、乳糖に耐性にない人は、乳糖を避けるのが無難です。
③窒素バランスと消化酵素反応
何らかの理由により、小腸の中に「窒素」が溜まると、pHが酸性に傾き、酵素反応が遅くなります。
※ pH:酸性かアルカリ性かを示す数値
たとえば、一度に消化・吸収できない量のタンパク質を摂ると、余った分は悪玉菌のエサになったり、窒素に変わったりします。
窒素はアンモニアになり、そのあと尿素になり、最終的に尿として排出されます。
このように短時間で窒素量が増えると、他の消化酵素が反応しなくなるのです。
「タンパク質は、摂れば摂るほど消化が遅くなる」
このようなジレンマに陥ってしまう可能性があるので注意しましょう。
タンパク質の1回の摂取量は、20〜40gにすることでスムーズに体内に吸収されます。
→ 関連記事「1回で吸収できるタンパク質量とは?」
■まとめ【小腸で吸収されるまでが栄養摂取】
今回は「小腸のメカニズム」を徹底解説しました。
栄養摂取は「口から摂取したら終わり」ではありません。
「小腸で吸収されて、はじめて栄養を摂取した」と言えるのです。
栄養を摂取しているのに思うような効果が出ない人は、腸内環境に目を向けてみることをオススメします。
→ 関連記事「腸は第二の脳⁉栄養オタクが”整腸”と”腸内細菌”を徹底解説」
◎要点まとめ
要点まとめ
- 腸の唯一のエネルギー源は「グルタミン」
- 腸は”副交感神経”が優位なときに活動する
- 体重が増えない人は「消化酵素」を摂る
✓膵液や胆汁の分泌を促進するホルモン
- セレクチン
- コレシストキニン
- 胃液分泌抑制ペプチド
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事があなたのお役に立つことができたのなら幸いです。