「大便(うんち)」が大腸のバロメーター
この記事を読むと分かること
- 大腸の構造
- 大腸の働き
- 大腸の主な疾病4つ
- 大腸を整える栄養素
「腸内環境を整えよう!」
このように言われると、栄養の吸収に関わる「小腸」に目が行きがちです。
しかし「大腸」も、腸内環境を整える上で重要な役割を担っています。
この記事を読めば、大腸のメカニズムを理解でき、栄養摂取を最大化することができます!
また、大腸だけでなく「小腸」のメカニズムも理解しておくことで、さらに効率の良い栄養摂取が可能になります。
「小腸について詳しくない」という人は、下記の記事も参考にしてください。
→ 関連記事「小腸のメカニズムを徹底解説」
■大腸の働き
参考:https://www.asahi.com/relife/article/12277263
大腸は、「小腸で吸収されなかった”消化物”から、水や電解質などを吸収し、”便”としてぜんどう運動で肛門に送る」という働きをしています。
◎食べ物が「便」になるまでの流れ
✓「食べ物」が「便」になるまで
食べ物を「口」から摂取
↓
「食道」
↓ (ここまで約1分)
「胃」
↓(約3〜4時間)
「十二指腸」でビタミン・ミネラルを吸収
↓
「空腸」で糖質・アミノ酸を吸収
↓
「回腸」でビタミンB12や残った栄養素を吸収
↓(ここまで約9時間)
「大腸」で水分を吸収
↓(12〜24時間)
「便」として排出
健全であれば、便は食後”24〜70時間”で排出されます。
しかし、便秘症状がひどい人の場合、食後”100〜110時間”も便が滞在することがあります。
■大腸の構造
参考:https://www.daiyukai.or.jp/department/naishikyou06/
- 虫垂
- 盲腸
- 上行結腸
- 横行結腸
- 下行結腸
- 上部直腸
- 下部直腸
これらを合わせて「大腸」と呼んでいます。
虫垂、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、上部直腸、下部直腸の順で、消化物が移動します。
◎虫垂・盲腸
虫垂・盲腸は、「進化の過程で退化してしまった臓器」と言われています。
草食動物は、食物繊維を消化する必要があるので、比較的大きな臓器として存在しています。
しかし、人間の虫垂・盲腸は、とても小さいです。
役割としては、虫垂・盲腸に存在するリンパ組織が、腸内細菌のバランスを調節するような働きをしてくれます。
ですので、まったく使われない臓器ということではありません。
◎上行・横行・下行結腸
上行結腸、横行結腸、下行結腸で、一般的な大腸の働きをしています。
消化物から水分を吸収して、ぜんどう運動しやすい形の便を作る働きです。
また、ここでは小腸で吸収しきれなかったミネラルが吸収されます。
そして、タンパク質や炭水化物などを分解・吸収して、残りの便を直腸へ送る役割もあります。
ちなみに、1日に消化管を通る水分量(摂取した水分+消化液に含まれる水分)は、”9〜10リットル”です。
そのうち7割くらいが小腸で再吸収され、残りの3割が大腸に進みます。
便は、ある程度水分が抜けた状態でないと、上手く排出することができません。
ですので、大腸で水分を抜き取り、ちょうどいい便を作っているのです。
◎上部・下部直腸
ここに来る頃には、便がちょうどいい形になっています。
この直腸は、便の短期的な”貯蔵場所”です。
ここで便をためて、便のかさが増すと腸粘膜が刺激され、便意が起こります。
便意が起こると、ぜんどう運動が促進し、腹筋群が収縮して、肛門の筋肉が緩み、便を排出します。
◎大腸の状態・バロメーターの判断方法
大腸の状態・バロメーターは、便を観察することにより判断が可能です。
「便の水分含有率」が指標になります。
一般的な便の水分含有率は、”70〜80%”です。
✓食べてから便が排出されるまでの時間
- 健全な便:約24〜70時間
- 硬い・コロコロの便:約100時間(便秘)
- 緩い・水みたいな便:約8〜10時間(下痢)
この便の状態をみて、健全な便であれば、大腸・小腸は機能していると考えていいでしょう。
もし、便が緩い・硬い場合は、大腸で水分が吸収できていない、もしくは小腸で上手く消化・吸収がされていないということが分かります。
■大腸の主な疾患
大腸の疾患を”4つ”+大腸がんについて、紹介していきます。
✓大腸の主な疾病
- 慢性便秘
- 慢性下痢
- 吸収不良症候群
- 大腸ポリープ
◎慢性便秘
長期間、便が大腸に留まることで、水分が多く吸収されて便が硬くなり、排便が困難になる症状です。
健全であれば、便は食後24〜70時間で排出されます。
しかし、日本人の約5%の人が、年齢とともに慢性便秘に悩まされています。
症状がひどい人は、便通を促進する薬(酸化マグネシウム)を服用する必要があります。
◎慢性下痢
便中の水分量が増え、液状になってしまう症状です。
日本人の約3%の人が、3週間以上の下痢に悩んでいます。
慢性下痢の主な原因は「過敏性腸症候群」です。
何らかのストレスや自律神経の乱れによって、腸全体で機能不全が起こり、下痢もしくは便秘症状が痛みを伴い発症するものです。
過敏性腸症候群は、日本人の約10〜15%の人が悩まされています。
特に、30代の女性の方に多く、男性の1.6倍の発症率です。
改善方法として、根本的なストレスを取り除く、温めるなどがあります。
◎吸収不良症候群
吸収不良症候群は、何らかが原因で消化吸収が阻害された病態です。
✓吸収不良症候群の原因
- 胃酸分泌が弱い
- 消化酵素の反応が悪い
- 交感神経が高くて腸の働きが鈍い
- 糖を分解できず小腸の柔毛から吸収できない
- 糖が吸収されず大腸でも吸収されない
- 小腸の消化酵素であるアミノペプチダーゼの反応が悪い
- 腸内環境の悪化 バイオロジカルバリュー(体内利用率)が低い栄養に偏っている など
原因は人それぞれなので、まずは何が原因で吸収不良が起きているのか特定することが大事です。
◎大腸ポリープ
大腸ポリープとは、大腸粘膜の一部がイボ状に隆起したものです。
「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」があります。
大腸ポリープと聞くと、「重大な問題に直結するのでは?」と思うかもしれません。
しかし、一部の大きくなりすぎたポリープを覗いて、大部分が良性のものです。
ですので、定期的に検査していれば問題ありません。
◎大腸がん
✓がんの部位別死亡率(男性)
- 1位:肺がん
- 2位:胃がん
- 3位:大腸がん
✓がんの部位別死亡率(女性)
- 1位:大腸がん
- 2位:肺がん
- 3位:膵臓がん
✓大腸がんの割合
- 直腸:33%
- S状結腸:33%
- 上行結腸:16%
- 横行結腸:10%
- その他:8%
大腸がんの検査を積極的にすべき人は「女性」です。
特に、50代以上の女性の方です。
■大腸を整える栄養素”4選”
✓大腸を整える栄養素”4選”
- プロバイオティクス
- プレバイオティクス
- 食物繊維
- 酸化マグネシウム
①プロバイオティクス
プロバイオティクスは、腸内常在菌のビフィズス菌、乳酸菌など、”善玉菌そのもの”のことです。
「善玉菌と言えば乳酸菌」と思うかもしれませんが、大腸では”99%がビフィズス菌”です。
ビフィズス菌は、発酵食品や乳製品、健康食品、サプリメントから摂取できます。
しかし、ビフィズス菌だけを摂取しても、”善玉菌のエサ”がないと菌は成長しません。
ですので、善玉菌の餌になる「プレバイオティクス」の摂取も重要です。
→ 関連記事「世界で一番売れているサプリメント”プロバイオティクス”」
②プレバイオティクス
プレバイオティクスは、善玉菌のエサになるものです。
例)オリゴ糖、イヌリンなど
③食物繊維
食物繊維には、水溶性と不溶性があります。
水溶性食物繊維:善玉菌のエサになり腸内環境を整える
不溶性食物繊維:便の量を増やす
✓食物繊維の摂取量
1日に必要な量:男性21g、女性18g
実際の摂取量:14g前後
つまり、ほとんどの人が、食物繊維が足りていない状態です。
「便秘」の症状で悩んでる人は、水溶性食物繊維。
「下痢」の症状で悩んでる人は、不溶性食物繊維がオススメです。
→ 関連記事「食物繊維の摂取で死亡率が低下する⁉オススメサプリ”3選”」
④酸化マグネシウム
酸化マグネシウムは、下剤の成分にもなっています。
プレバイオティクス、プロバイオティクス、食物繊維でも便秘の症状が改善しない場合は、「酸化マグネシウム」を摂りましょう。
■まとめ【大腸も大事】
今回は、大腸の働きや構造、主な疾病、大腸を整える栄養素を紹介しました。
”栄養摂取”で考えると、大腸よりも小腸のほうが重要です。
しかし、”排便”に関しては、大腸のほうが重要になります。
また、”便秘”が続くと消化吸収能力が落ちてしまいます。
ですので、中長期で考えると、栄養摂取という面でも大腸に目を向けるべきです。
便秘または下痢の症状がある人は、早めに改善するようにしましょう!
◎要点まとめ
要点まとめ
- 健全な便は、食後24〜70時間で排出される
- 排便に関しては、大腸が大事
- 中長期で考えると、栄養摂取の面でも大腸は大事
✓大腸の主な疾病
- 慢性便秘
- 慢性下痢
- 吸収不良症候群
- 大腸ポリープ
✓大腸を整える栄養素”4選”
- プロバイオティクス
- プレバイオティクス
- 食物繊維
- 酸化マグネシウム
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事があなたのお役に立つことができたのなら幸いです。