一番速いエネルギー機構
この記事を読むと分かること
・ホスファゲン機構とは?
・ATP供給のメカニズム
・クレアチンリン酸とは?
・クレアチンの摂取方法と応用
筋肉を動かすためのエネルギー機構は大きく3種類です。
・ホスファゲン機構
・解糖系
・酸化機構
この中でも、一番エネルギー供給の速い「ホスファゲン機構」について解説していきます。
ホスファゲン機構を理解することで、高強度のトレーニングでエネルギーを無駄なく筋出力に応用することが可能です。
■ホスファゲン機構(ATP・PCr系)とは
ホスファゲン機構を一言で説明すると、「3つあるエネルギー供給源の中でも最も速い供給源」のことです。
人間が筋肉を動かすときにエネルギーにしているのは「ATP」です。
ATP(アデノシン三リン酸)が、「ADP(アデノシン二リン酸)」と「無機リン酸」に分解される過程で生じるエネルギーを使って体を動かしています。
✓ATPを合成する3つの機構
①ホスファゲン機構(クレアチンリン酸を使う)
②解糖系(糖を使う)
③酸化機構(脂質を使う)
この中でも一番エネルギー供給が速いのが、「ホスファゲン機構」です。
次に速いのが「解糖系」、そして「酸化機構」の順番です。
一番エネルギー供給が速いということは、高強度のトレーニングに向いているということになります。
◎ATPの供給割合
参考:https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002433.html
ホスファゲン機構(ATP-PCr系)は、運動時間が短く、運動強度の高い運動のときに使われます。
運動時間が長くなり、運動強度が落ちていくにつれて「糖」の関与が増えていきます。
そして、マラソンのような長時間の運動では、脂質をエネルギーにする「酸化機構(有酸素系)」が優位になっていきます。
◎ホスファゲン機構のエネルギー源
ホスファゲン機構は、「クレアチン」をエネルギー源にしています。
クレアチンは、サプリメントで摂るイメージがありますが、体内で作ることができる栄養素です。
ただ、ハードに運動をしている人は体内での生成では足りなくなるので、食事やサプリメントで摂る必要があります。
◎代謝とATP供給のメカニズム
アルギニン+グリシン
↓ → オルニチン
グアニジノ酢酸
↓ → SAホモシステイン
クレアチン
ATP ← ↑↓ ←クレアチンキナーゼ
クレアチンリン酸 →クレアチニン
✓クレアチン
→ 体内でアルギニンとグリシンから作られる
→クレアチンリン酸が、ADPにリン酸を受け渡すこと(ATP合成)でクレアチンになる
✓クレアチンキナーゼ
→ 無機リン酸を捕まえる役割をする酵素
クレアチンから「クレアチンリン酸」を作るのに関与する
✓クレアチンリン酸
→ ATPからADPになったときにフリーになった「無機リン酸」に、クレアチンキナーゼという酵素が関与することで「クレアチンリン酸」が作られる
✓ATP
→ クレアチンリン酸から「リン酸」をADPに受け渡すことで「ATP」が再合成される
クレアチンが、クレアチンリン酸になることもあり、
クレアチンリン酸が、クレアチンに戻ることもある。
また、体内のクレアチンの90〜95%以上は、「クレアチンリン酸」という形で筋肉内に貯蔵されています。
※残りは「脳」に貯蔵されている
◎クレアチンの貯蔵量
クレアチンの貯蔵量は、体重70kgの男性で約120gです。
筋肉量の多いボディビルダーの方だと180〜190g貯蔵されていることもあります。
これを見ると多いように感じます。
しかし、グリコーゲンの貯蔵量は400〜500g、体脂肪なら数kg〜十数kgも貯蔵されているので「クレアチンリン酸の貯蔵量は少ない」と言えるでしょう。
■クレアチンの摂取方法と応用
クレアチンは、多くのスポーツ選手、ボディビルダーから人気の栄養素です。
人気の理由は、エビデンスもあり効果を実感できるからです。
そんなクレアチンの「摂取方法」と「応用の仕方」を解説していきます。
◎クレアチンの摂取方法
摂取量:モノハイドレートで3〜5g/日
クレアチンは、摂取してから貯蔵されるまでに時間がかかります。
リン酸と結合してATP供給できるまでには、”半日〜数週間”かかると言われています。
すぐにクレアチンの効果を発揮したい場合は、毎日大量(25g程度/日)に摂取して1週間過ごす「クレアチンローディング」が必要になります。
もしくは、「クレアチンHCL(塩酸塩)」なら、すぐに効果を発揮することができます。
クレアチンHCLは、筋細胞内でクレアチンリン酸として存在できる時間を短くすることで、すぐに効果を発揮できるようになっています。
そのため、トレーニングの30分〜1時間前に摂っても、トレーニング中のエネルギーにすることが可能です。
◎クレアチンは「糖質」との相性が良い
クレアチンは、糖質と一緒に摂取することで、効率良く吸収することができます。
糖質を摂取することで「インスリン」が分泌されます。
クレアチンも他の栄養素と同様に、インスリン反応で細胞内に運ばれるため糖質との相性が良いです。
目安として、”クレアチン5g”に対して、”ブドウ糖約20g”を摂取するのが理想です。
さらに細かく言うと、食前にクレアチンを摂取、そのあと食事をしてインスリンを分泌させると、血液中からのクレアチンの取り込みのタイミングがちょうどよくなります。
◎クレアチンの輸送には「電解質」が必要?!
クレアチンの輸送には、電解質が必要不可欠です。
※電解質:「Na(ナトリウムイオンが2つ)」と「Cl(クロームイオンが1つ)」
そして、クレアチンリン酸からADPにリン酸基を受け渡す際には、一定以上のマグネシウム濃度が必要です。
そのため、慢性的なミネラル不足、発汗の多い時期、運動をしている環境下などでは、クレアチンを摂取する前に積極的な電解質の補給が必要になります。
◎クレアチンと相性の良い・悪い栄養素
✓プロテイン・HMB(相性が良い)
プロテイン・HMBとクレアチンを同時に摂った場合、クレアチン単体で摂った場合よりも、”筋出力が8〜17%向上”したという研究があります。
✓カフェイン(相性が悪い)
カフェインとクレアチンの同時摂取は、クレアチンの”筋出力向上作用を打ち消す”という研究があります。
特に、30〜40代以降の方のクレアチン摂取に顕著に見られます。
しかし、クレアチンとカフェインの摂取の間隔を少しだけ離すことで、筋疲労を感じにくくするというレビューも少なからず存在します。
■まとめ
今回は、3つあるエネルギー機構の中でも、1番供給の速い「ホスファゲン機構」について解説しました。
筋トレをしている人は、短い時間での高出力が求められるため、ホスファゲン機構で使われる「クレアチン」は積極的に摂取したい栄養素の1つです。
また、盲点なのが”マグネシウム濃度”です。
マグネシウム濃度が低いと、クレアチンの効果が落ちてしまうため、不足しがちな人は積極的な摂取を心がけましょう。
◎要点まとめ
要点まとめ
・ホスファゲン機構は、運動時間が短く、運動強度の高い運動のときに使われる
・クレアチンの摂取量:3〜5g/日
・クレアチンの輸送には”電解質”が必要不可欠
✓ATPを合成する機構
①ホスファゲン機構(クレアチンリン酸を使う)
②解糖系(糖を使う)
③酸化機構(脂質を使う)
✓クレアチンと相性が良い栄養素
・糖質
・プロテイン
・HMB
✓クレアチンと相性が悪い栄養素
・カフェイン
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が、あなたのお役に立つことができたのなら幸いです。