この記事を読むと分かること
・カーボアップとは?
・グリコーゲンの貯蔵量ってどれくらい?
・グリコーゲン超回復を促進する方法
・GLUT4を増やす方法
「カーボアップをして体脂肪が増えるのが怖い…」
「コンテスト前のカーボアップのやり方に不安がある…」
カーボアップを間違ったやり方で行ってしまうと、今までの減量の苦労が水の泡になってしまいます。
この記事では、カーボアップの極意(グリコーゲン超回復のメカニズム)を徹底解説しています。
最後まで読むことで、グリコーゲン超回復(カーボアップ)の真実を知ることができ、コンテスト当日、パンパンに張った身体でステージに立つことができるでしょう!
■カーボアップとは?
「カーボアップ」は、ボディビルやフィジークなどの筋肉系の競技でよく使われる言葉で、別名「グリコーゲンローディング」と言います。
試合前に、糖質の多い食事をして”グリコーゲン濃度”を高めておくことにより、”持久力”がアップします。
さらに、筋肉内のグリコーゲン濃度が高まると、”筋肉そのもの”の体積が増えます。
ですので、ステージ上でより大きく見せることが重要なボディビルダーも活用しているのです。
■カーボアップの『極意』
グリコーゲンは、炭水化物(糖質)を摂取することで溜めることができます。
✔グリコーゲン貯蔵量の目安
・血液中:「10〜20g」
・肝臓:「100〜150g」
・骨格筋:「300〜400g」
→ 合計:約400〜550g(筋肉量によって異なる)
【関連記事】「カーボアップ」の教科書 〜ボディビル・フィジーク〜
◎運動をすると「グリコーゲン超回復」が促進される
運動をするとグリコーゲン超回復が促進されます。
※グリコーゲン超回復:消費されたグリコーゲンが元の状態または、それ以上に回復すること
理由は、「GLUT4と呼ばれる糖輸送体が活性化するから」です。
食事をして血糖値が高まると、膵臓から分泌される「インスリン」によって「GLUT4」が活性化されます。
GLUT4が活性化されると、血液中の血糖を取り込み、血糖値が下げるというメカニズムになっています。
✔血糖を取り込むメカニズム
食事から「糖質」を摂取
↓
膵臓から「インスリン」が分泌
↓
骨格筋細胞膜に存在する「インスリン受容体」に結合
↓
その刺激により細胞内の「情報伝達経路(インスリンシグナル経路)」が活性化
↓
「GLUT4」が細胞膜へと移動
↓
細胞内に血糖を取り込む
【関連記事】「インスリン抵抗性」を予防・改善する栄養学的アプローチ
◎グリコーゲンを溜めるには「GLUT4」を増やすのがカギ
”GLUT4”の量と”筋グリコーゲン”の量は相関関係があり、骨格筋に存在する「GLUT4」が多ければ多いほど、血糖を取り込む能力は高くなります。
つまり、GLUT4を増やすことができれば、それだけ多くの血糖を取り込むことができるということです。
◎GLUT4を増やす方法
GLUT4を増やす方法は、「糖質を摂取してインスリンを分泌させること」です。
そして、もう一つの方法が『トレーニング』です。
マラソン選手のような低〜中強度での長時間のトレーニング、いわゆる持久的なトレーニングを行うことで、骨格筋のGLUT4が増加し、インスリンによる血糖取り込みが活発になるという報告があります。
また、日頃からトレーニングをしている人は、GLUT4が増加している傾向にあるということも分かっています。
参考論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9292478/
◎カーボディプリートは必要ない?!
カーボディプリート(グリコーゲンローディング)は、通常1週間ほど前にグリコーゲンを減少させる運動を行います。
しかし、カーボディプリートを行うと、試合当日に疲労が残ってしまう可能性があります。
ですので、ディプリートをせずにカーボアップを行うのが”現在の主流”になっているのです。
◎アスリートはそもそもGLUT4が多い
トレーニングを十分に積んだアスリートは、GLUT4が増加しているため「血糖取り込み能力・グリコーゲン合成能力は高い状態にある」と言えます。
そのため、アスリートは、普段のトレーニング量を調整しながら「高糖質食を摂取するだけでも十分に効果がある」のです。
ボディビルのような減量を行っている場合は、すでに”グリコーゲンが枯渇している”ため、疲労が残るような危険性のある「ディプリート」を行う必要はありません。
◎筋肉を使った部位にしかグリコーゲンは溜まらない?!
「”片方の脚のみ”運動をさせ、そのあと糖質を摂取させた」という研究が行われた。
片方の脚だけで自転車運動を行うと、当然、運動をした”片方の脚のみ”グリコーゲンは減少する。
片方の脚のみ運動させたあと、”高糖質食を3日間摂取”させた。
結果は、『運動を行っていない脚のグリコーゲン濃度は変化しなかったのに対して、運動を行った脚ではグリコーゲンが増えた』(運動をしていない脚の2倍ほど)
口から摂取した栄養素は血液に乗って、両脚に運ばれるものの、グリコーゲンの貯蔵量は両脚で全く異なるということが分かった。
この結果から、筋グリコーゲンを一度減少させることで、グリコーゲンの超回復を促進させると言える。
参考論文:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm1949/45/4/45_4_461/_article/-char/ja/
◎体内水分量に注意
グリコーゲンローディングを行うと、水分量が増え体重が増加します。
骨格筋や肝臓にグリコーゲンが1g貯蔵されると、同時に2.6〜2.7gの水分も貯蔵されるためです。
体重が増加すると、パフォーマンス能力が低下する危険性があります。
ですので、運動時間が1時間を超える場面において、グリコーゲンローディングを行うようにしましょう。
■グリコーゲンは筋収縮に関与している?!
筋グリコーゲンは「①細胞膜直下」「②筋原線維間」「③筋原線維内」の3箇所に点在している。
これらのうち、③筋原線維内のグリコーゲンが減少すると、筋小胞体からのカルシウムイオン(Ca2+)の放出が妨げられ、筋収縮活動が持続できなくなるという可能性が示唆されている。
参考論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23652590/
◎グリコーゲンが足りないと…
マラソンのような1時間を超える運動では、後半になると突如としてペースが落ちるタイミングがある。
これは「30kmの壁」とも言われる。
この減少の原因として「体内のグリコーゲンの貯蔵量が少ない」、特に『骨格筋のグリコーゲンの減少・枯渇』が関与していると言われている。
トレーニングの後半で急に力が入らなくなるのは、この減少が原因かもしれません。
したがって、長時間の運動のパフォーマンスを維持するためには、運動前および運動中に十分な”糖質”を摂取し、グリコーゲン貯蔵量を増やすことが重要であると言えます。
■まとめ
今回は、カーボアップの極意(グリコーゲン超回復)について解説しました。
カーボアップを成功させるポイントは「GLUT4」であり、GLUT4を増やすのは「トレーニング」です。
グリコーゲン超回復のメカニズムを理解して、失敗しないカーボアップを行ってください。
要点まとめ
- グリコーゲンを溜めるカギは「GLUT4」
- GLUT4を増やす方法は「インスリン分泌」と「運動」
- アスリート(ボディビルダー)はカーボディプリートは必要ない
- グリコーゲンは使った部位(筋肉)にしか溜まらない
- グリコーゲンが1g貯蔵されると同時に2.6〜2.7gの水分も貯蔵される
- グリコーゲンが枯渇すると筋収縮活動ができなくなる
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が、あなたのお役に立つことができたのなら幸いです。