この記事を読むと分かること
・糖質の種類
・フルーツ=果糖ではない?!
・小腸からの吸収経路
・果糖(フルクトース)の代謝経路
・果糖では血糖値は上がらない?
「果糖はエネルギーにならない」
「血糖値を上げないからインスリン抵抗性に繋がる」
このように『果糖は悪者扱い』されることが多いです。
実際、果糖は「積極的に摂取する必要はない」栄養素だと思います。
この記事では、果糖の基礎知識+代謝経路を解説しています。
記事を読むことで、果糖が吸収される過程を知ることができ、メリットを生かした果糖の摂取ができるようになるでしょう。
■糖質の種類
✓単糖類
→ 糖が1個で存在しているもの
・グルコース(ブドウ糖)
・フルクトース(果糖)
・ガラクトース
✓少糖類
→ 糖が2〜10個程度結合して存在しているもの
・スクロース(ショ糖)
・ラクトース
・マルトース
✓多糖類
→ 糖が10個以上結合して存在しているもの
・デンプン
・グリコーゲン
◎果物(フルーツ)= 果糖ではない?!
よくある勘違いで「果糖=フルーツに含まれる糖質」というものがあります。
しかし、実際はフルーツに含まれる糖質の全てが果糖ということではありません。
フルーツによって「ショ糖」「グルコース」「フルクトース」の3種類の糖質のバランスが異なります。
※ショ糖:グルコースとフルクトースが1:1
↓↓「フルーツ100gあたりに含まれる糖質の種類」
ショ糖 |
グルコース |
フルクトース |
|
ブドウ |
0 |
7.3 |
7.1 |
さくらんぼ |
0.2 |
7.0 |
5.7 |
りんご |
5.0 |
1.4 |
6.3 |
マンゴー |
9.8 |
0.7 |
3.1 |
スイカ |
1.5 |
1.9 |
4.1 |
洋ナシ |
0.7 |
2.4 |
6.0 |
このようにフルーツの種類によって、各糖質の含有量は異なります。
たとえば、「りんご」の可食部は250g程度ですので、1個食べてもフルクトースの量は10〜15g程です。
よく言われている、インスリン抵抗性を上げる・脂肪肝の原因になる量として言われているのは「30〜40gの果糖を1度に摂取した場合」が挙げられます。
ですので、1回15g程度であれば全く問題ないと考えられます。
■小腸からの吸収経路
小腸から栄養が吸収されるときは「小腸粘膜上皮細胞」から体内に取り込まれます。
この小腸粘膜上皮細胞に入るためには、”輸送体が必要”になります。
✓グルコース・ガラクトース:「SGLT(ナトリウム依存性グルコース輸送体)」
→ ナトリウムがあることで輸送体が働く
✓フルクトース:GLUT5(グルコース輸送体タイプ5)」
→ 小腸粘膜上皮細胞から血管にはいるのは「GLUT2」
→血管から各細胞への輸送は「GLUT4」
小腸からの吸収スピードは、ナトリウム依存性のものの方が早く、GLUT5の働きはSGLTよりかなり遅い。
※フルクトースはグルコースの43%程度の速さで吸収される
フルクトースは吸収が速いと言われるが、小腸からの吸収で見ると、圧倒的にグルコースの方が速い。
◎フルクトースは吸収が速いと言われる理由
グルコースは小腸から吸収されて血管を通り、各細胞に運ばれます。
このとき「GLUT4」が必要です。
そして、このGLUT4は、”インスリン依存”です。
つまり、グルコースは、血糖値が上がることでインスリンが分泌され、はじめて、血液内の栄養を細胞に運ばれます。
しかし、フルクトースは違います。
フルクトースは、小腸から吸収されると直接、肝臓に繋がっている”門脈”という血管を通ることができます。
肝臓には、多くの代謝酵素があるため、すぐに代謝が始まります。
要するに、代謝が速いのは「フルクトース」、小腸からの吸収が速いのは「グルコース」ということです。
■ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)の代謝経路
「フルクトースはエネルギーにならない」と言われますが、そんなことはありません。
しかし、グルコースの方が”吸収の効率が良い”というのは確かです。
◎ブドウ糖(グルコース)の代謝経路
(グルコース)
↓
①グルコース-6-リン酸
↓
②フルクトース-6-リン酸
↓
③フルクトース-1-6-ビスリン酸
↓
④ジヒドロキシアセトンリン酸
↓
⑤グリセルアルデヒド-3-リン酸
↓
⑥ホスホエノールピルビン酸
↓
⑦ピルビン酸
↓
⑧アセチルCoA
↓
TCA回路へ→ATP合成
フルクトースがエネルギーになるときは、グルコースに変わって解糖系に入り代謝が起こります。
◎果糖(フルクトース)の代謝経路
(フルクトース)
肝臓 ↓ → ①グルコース-6-リン酸
フルクトース-1-リン酸
肝臓 ↓ → ③フルクトース-1-6-ビスリン酸
→ ④ジヒドロキシアセトンリン酸
グリセルアルデヒド
肝臓 ↓ → ⑤グリセルアルデヒド-3-リン酸
グリセロール(脂質)
肝臓 ↓
トリグリセリド(中性脂肪)
果糖は、大きくこの4つから解糖系に入ってエネルギーを生産します。
そして、一部は肝臓に「肝グリコーゲン」として蓄えられます。
糖が足りなくなって血糖値が下がってきたときに、肝臓にある果糖を糖に変化させることができるので「糖新生が起こっているときにフルクトースは働きやすい」と言えます。
また、解糖系に行かなかったものは、肝臓でグリセロール(脂質)になり、最終的にトリグリセリド(中性脂肪)に変わります。
そのため、「脂肪肝になりやすい」、肝臓中の中性脂肪が増えることにより「インスリン抵抗性が上がる」という原因と言われています。
これらは、1回に果糖を30〜40g以上、1日に何回も摂るなど、継続的に摂取すると健康上に悪影響が出ると言われています。
◎フルクトースは血糖値を上げない?!
結論、フルクトースを摂っても血糖値は上がりません。
なぜなら、血糖値は「ブドウ糖(グルコース)の値」を指しているからです。
ですので、ブドウ糖の比率が低いフルーツは、必然的にGI値は低くなります。
※フルーツのGi値は大体20〜30程(白米のGI値:88)
血糖値が上がらないということは「インスリンも分泌されない」ということです。
なので、プロテインをGLUT4と共に運びたいときに摂取する糖として、果糖は適していないということになります。
■フルーツは必ずしも「悪」ではない?!
「みかんの摂取量「と「疾病のリスク」の研究
研究:6,000名を対象にしたコホート研究
内容:みかんを食べる量が、①週に2〜3回、②毎日1〜3個、③毎日3個以上
結果:みかんを食べる量が増えるほど、糖尿病・高血圧・心臓病・痛風のリスクが低下した
考察:柑橘系に含まれるカロテノイド「βクリプトキサンチン」の抗酸化作用・抗糖化作用などの働きにより、生理的バロメータを改善させたのでは?
結論:フルーツにはカロテノイドやポリフェノール、ビタミン・ミネラルを豊富に含むため、フルクトースの含有率によっては、デメリットよりも微量栄養素のメリットが上回るケースもある
»【関連記事】高齢者・筋肥大した人にオススメ!!「βクリプトキサンチン」
■まとめ
今回は「果糖」の吸収・代謝経路を解説しました。
エネルギー効率の悪さ・肝脂肪・インスリン抵抗性などのデメリットを考えると、果糖は必要ないかと思います。
しかし、”フルーツ”としての果糖の摂取は微量栄養素のメリットがあるので「果糖が絶対にダメ」ということではありません。
「1回30〜40gの果糖を毎日摂取」
このようなことがなければ健康上問題ありませんので、上手に果糖と付き合っていくと良いでしょう。
要点まとめ
・フルーツは「ショ糖」「グルコース」「フルクトース」の3種類の糖質を含む
・30〜40gの果糖を1度に摂取した場合、これを継続的に行うと疾病に繋がる
・代謝が速いのは「フルクトース」、小腸からの吸収が速いのは「グルコース」
・果糖は血糖値を上げない
・フルーツとしての摂取はデメリットを上回るメリットがある
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が、あなたのお役に立つことができたのなら幸いです。