栄養学 栄養素解説

アミノ酸もエネルギーになる?!アミノ酸の「代謝」と「エネルギー化」

 

この記事を読むと分かること

・体内のアミノ酸の使われ方

・アミノ酸の「代謝」

・アミノ酸はエネルギーになるのか?

 

趣味筋肉
栄養学を学べる日本一の学校NNC・セミナー・書籍・論文などで「栄養学」を学んでいる、栄養オタクトレーニー、趣味筋肉(しゅみきん)です。

筋肉7年目、2019年JBBFメンズフィジーク”県2位”

 

人間は、三大栄養素のうち「糖質・脂質」をエネルギーにしてます。

 

では、「タンパク質」が分解された「アミノ酸」はどうでしょう?

アミノ酸を代謝して”エネルギー”として使えるのでしょうか?

 

この記事では、アミノ酸の基礎知識・どのような代謝経路があるのか?を解説しています。

 

アミノ酸の代謝は、”専門家”であっても「全ては把握していない」と言われるほど複雑です。

 

そこで、運動指導者・趣味でトレーニングしている人が、最低限覚えておけばいいポイントに絞って解説していきます。

 

■生体内のアミノ酸(タンパク質)利用

 

体内のタンパク質は、体重の”約15%”を占めています。

※日本人の平均的な体重60〜70kgの場合

 

70kgの人の場合は、体内に”10.5kg”のタンパク質を常に持っていることになります。

 

◎タンパク質の2.5%は分解されている!?

 

毎日、体内の”2.5%”(約260g)がタンパク質は分解されてアミノ酸になり、何かしらに使われています。

 

そして、2.5%(約260g)のアミノ酸の8割である”2%”(約210g)は、体内で再度タンパク質を作るために用いられます。

 

要するに、体内で分解されたタンパク質の「8割は再利用される」ということです。

 

◎タンパク質の0.5%ロスされている

 

体内のタンパク質の2.5%が毎日分解され、そのうち2%は再利用される。

では、残りの0.5%はどうなるのか?

 

残りの”0.5%”(約50g)は、ATPとして供給されて発散したり、一部は尿から抜けていくアミノ酸もあったりしてロスされます。

そして、この0.5%(約50g)の「純損失分のアミノ酸(約50g)を食事性のタンパク質で補う必要がある」のです。

 

一般人では、1日”45〜50g”程度をアミノ酸として消費します。

 

そのため、消化吸収のロスも考慮すると、1日の食事摂取量は「1.2〜1.4倍にあたる60〜70gのタンパク質を摂るべき」と言われるのです。

 

»【関連記事】厚生労働省が1日のタンパク質を50gと定めている理由

 

■アミノ酸の「代謝」

 

アミノ酸は大きく20個あり、そのうち9個は体内で合成できない「必須アミノ酸」です。

そして、その他のアミノ酸11個は体内で合成可能な「非必須アミノ酸」です。

 

各アミノ酸には、固有の代謝経路があり、その反応や関連酵素もそれぞれ特徴があります。

 

また、十分な生合成の経路を持たないアミノ酸(必須アミノ酸)も存在します。

 

◎「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」

 

✓必須アミノ酸(9種類)

①バリン ②ロイシン

③イソロイシン ④トリプトファン

⑤スレオニン ⑥ヒスチジン

⑦フェニルアラニン ⑧メチオニン

⑨リジン

 

✓非必須アミノ酸

①アスパラギン ②アスパラギン酸

③アルギニン ④アラニン

⑤グルタミン ⑥グルタミン酸

⑦グリシン ⑧システイン

⑨セリン ⑩プロリン

⑪チロシン

※非必須アミノ酸は、必須アミノ酸から体内で合成できるので「食事から摂る必要はない」と言われています。

 

◎「L-〇〇」と「D-〇〇」とは?

 

グリシンを除いた19個のアミノ酸は、立体異性体(L体)を持っています。

サプリメントでよくある「L-〇〇」という形は、体で”上手く代謝できる形”ということです。

 

また、人工生成をする際に、ほぼ同じ形だけど生理活性がないものが「D体」です。

「D-〇〇」は、摂取してもアミノ酸として働かないので、サプリメントには「L-〇〇」と付いているのです。

 

■アミノ酸はエネルギーになる!?

 

結論から言うと、アミノ酸はエネルギーになります。

しかし、直接的なエネルギー源というわけではなく、”補助的なエネルギー”として、です。

 

◎3種類のエネルギー供給機構

 

人間のエネルギー供給機構には”3種類”あります。

①クレアチンリン酸(ホスファゲン機構)

②脂質(酸化機構)

③糖質(解糖系)

 

①瞬発的な運動をするとき

→ 1レップ、2レップの筋トレ

 

②運動強度が低いとき

→ 安静時は脂質が8割、糖質が2割

 

③強度が上がるにつれて、糖質の割合が増える

→ 筋トレのような強度の高い運動をすると、糖質が5割を超えてくる

 

このように、メインのエネルギー供給機構には、アミノ酸はありません。

 

では、どうやってアミノ酸はATPになるのか?

 

アミノ酸は「酸化機構」と「解糖系」の”両方から”ATPの合成経路に入ることができます。

 

↓↓【関連記事】↓↓

» 「ホスファゲン機構」を理解して筋出力を最大化せよ

» 「酸化機構」を徹底解説!エネルギー産生を最大化

» 「解糖系」を徹底解説!エネルギー産生を最大化

 

◎酸化機構から入る「ケト原性アミノ酸」

 

「純ケト原性アミノ酸」という、ケトン体の材料になるアミノ酸があります。

ケトン体からしかエネルギー供給をしないのが「ロイシン」「リジン」です。

 

つまり、ケトジェニックダイエットのときは「ロイシン」と「リジン」を増やすと、ケトン体の供給量が一定量担保されると考えられます。

 

そして、チロシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニンに関しては「ケトン体にもグルコースにもなれる」という、非常に便利なアミノ酸です。

 

しかし、トリプトファン、フェニルアラニンは、1日の摂取量が少ないアミノ酸です。

 

やはり、ケトジェニックダイエットでは、ロイシン・リジンをいかに充足させるかがカギになります。

 

◎解糖系から入る「糖原性アミノ酸」

 

純ケト原性アミノ酸(ロイシン・リジン)以外のアミノ酸は、解糖系に入ることができる「糖原性アミノ酸」です。

 

ブドウ糖が代謝されてピルビン酸に変わり、アセチルCoAに変わり、ミトコンドリアに入り、クエン酸回路(TCA回路)に入り、電子を受け渡す。

その先に電子伝達体があって、4つの複合体を通りつつ、最後ATP合成酵素にプロトン電子が跳ね返ってきたときに、その力を利用してATPを作る。

 

このような解糖系の経路がありますが、各アミノ酸によってどこから入ってくるのか”非常に複雑”です。

主にクエン酸回路から入ってくることが多いですが、代謝経路は本当にバラバラです。

 

◎各アミノ酸の代謝先

参考:http://www2.huhs.ac.jp/~h990002t/resources/downloard/15/15biochem3/06aminoacidmethabolism15.pdf

 

・2−オキソグルタル酸:アルギニン、グルタミン、ヒスチジン…

・オキサロ酢酸:アスパラギン、アスパラギン酸…

・ピルビン酸:アラニン、セリン、グリシン、スレオニン…

・アセト酢酸:ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、リジン…

・スクシニルCoA:メチオニン、バリン、イソロイシン…

・アセチルCoA:スレオニン、イソロイシン、ロイシン…

・フマル酸:フェニルアラニン、チロシン…

 

このように、各アミノ酸はさまざま経路でクエン酸回路に入り、エネルギーを産生しているのです。

 

◎BCAAは他のアミノ酸と何が違うの?

 

BCAAと他のアミノ酸の違いは、最初に代謝される臓器です。

 

一般的なアミノ酸は「肝臓」に代謝酵素があるため、肝臓で代謝されます。

しかし、BCAAの代謝酵素(BCAT・BCKDH)は、肝臓に存在せず「筋肉内」にあるため、筋肉内で代謝されます。

 

筋肉の収縮・伸張動作を繰り返しているときは、筋肉を刺激するので、BCAAが全アミノ酸の中で積極的に使われる時間になります。

 

つまり、アミノ酸の利用割合が分散してしまい、特定のアミノ酸(BCAA)だけ利用量が減ってしまう現象(インバランス)が起きるのです。

 

なので、トレーニング中は、筋分解抑制やエネルギー供給を考える上でも「たくさんのBCAAを摂りましょう」と言われるのです。

 

◎筋肉を分解する「糖新生」

 

BCAAは、短時間で直接的なエネルギーになるわけではありません。

そのため、糖質と脂質が減ってくると、エネルギーが減って体が成り立たなくなります。

 

そこで、最後の手段として「体に蓄えられているタンパク質をエネルギーにせよ」という指令が出されます。

 

これが「糖新生」と言われる反応です。

 

✓糖新生が起こる流れ

運動 → 血糖値が下がる → アドレナリン・グルカゴンが分泌 → 血糖値が上げようとする → 糖原性アミノ酸を使って糖を作る → 作ったグルコースで血糖値をまかなう

 

»【関連記事】筋肉を分解する「糖新生」とは?

 

◎糖新生を起こさないためには…

 

糖新生を起こさないために、最初にやるべきことは「血糖値を下げないこと」です。

 

ですので、「糖」を補い血糖値を安定させて、エネルギー供給をキープしましょう。

 

エネルギー供給をキープして「アミノ酸をタンパク質から分解させないこと」が、筋肉を守る・運動強度を上げる上で、一番優先順位が高いことになります。

 

◎BCKDHの補酵素

 

BCAAは最初に「BCAT」に反応してそのあと「BCKDH」に反応し、最終的に代謝されていきます。

そして、この「BCKDH」に必要な補酵素が「NAD+(ナイアシン)」です

 

ですので、BCAAを摂るのであれば、「血中のNAD+(ナイアシン)と相関関係にある」といった点にも注目するといいでしょう。

 

こういった点にも注目できると、プラスαのサプリメンテーションや栄養コントロールが期待できるでしょう。

 

■有害な物質を排出する回路

 

体内では、常に作られている”有害な物質”というものがあります。

たとえば、「活性酸素」「アンモニア」などです。

 

特にタンパク質をたくさん摂っている人は、消化されなかったタンパク質は窒素に変わり、そのあとアンモニアに変わる反応があります。

 

しかし、アンモニアは体に残すと害を及ぼすので排出しなければいけません。

 

このときに使われるのが「オルニチン回路(尿素回路)」です。

 

◎オルニチン回路(尿素回路)

 

「アンモニア」は、肝臓で「尿素」へ変わり、腎臓で尿素から「尿」に変わって、”無毒化”して排出されます。

 

肝細胞内のミトコンドリアの中に「シトルリン」があると仮定すると…

 

シトルリン → アルギノコハク酸 → アルギニン → オルニチン → シトルリン

 

このオルニチン回路(尿素回路)が回っていく過程で「フマル酸」が作られます。

 

つまり、尿素回路を回しつつ、フマル酸経由でクエン酸回路にも流れていく。

これもシトルリンを使って血糖(エネルギー)を生む、一つの糖新生の経路です。

 

◎プレワークで「アルギニン・シトルリン」が入っている理由

 

プレワークでは、アルギニンやシトルリンが”血管拡張目的”で入っています。

 

しかし、上記で説明したように、アルギニンやシトルリンは「フマル酸」経由でクエン酸回路に入り、エネルギーに変換できます。

 

ですので、アルギニン・シトルリンは、エネルギー供給面で見ても効率的なATP供給源になると言えます。

 

しかし、アミノ酸なので、糖質や脂質のようにATPの合成効率が高いわけではないのでご注意を。

 

■まとめ

 

今回は、アミノ酸の「代謝」と「エネルギー」について解説しました。

 

アミノ酸は、あくまで”非常用電源的”な役割です。

直接的にATP供給をするエネルギー源ではありません。

 

1日に分解されて再利用されるアミノ酸は250g程度しかないので、直接的なエネルギーになる「糖質・脂質」の方が大事ということはお忘れなく。

 

要点まとめ

  • 1日”260g”アミノ酸が分解される

  • そのうち”210g”アミノ酸が体内で再利用される

  • 残りの50gはされるため、この分を食事から補う必要がある

  • 酸化機構からエネルギーを作るのが「ケト原性アミノ酸(ロイシン・リジン)」

  • 解糖系からエネルギーーを作るのが「糖原性アミノ酸(そのほかのアミノ酸)」

  • 血糖値をキープして「糖新生」を起こさないのが大事

  • BCAAを摂るときはのBCKDHの補酵素「ナイアシン」を摂ると良い

  • 「アルギニン」や「シトルリン」もエネルギーになる

最後まで読んでいただきありがとうございます。

この記事が、あなたのお役に立つことができたのなら幸いです。

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筋肉・栄養オタク|2019年JBBFメンズフィジーク県2位|フィットネスライター|筋トレ初心者でも”即実践可能な栄養学”を発信|健康的にバルクアップ・ダイエットしたい人向けの栄養記事を書いてます!|月間1.5万PV以上

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