改善よりも「予防」が大事
この記事を読むと分かること
- 痙攣・攣りが起こる「メカニズム」
- 痙攣・攣りを予防する「栄養学的アプローチ」
- やりがちだけど「間違った処置方法」
筋トレ歴6年、2019年JBBFメンズフィジーク”県2位”
栄養の学校NNCやセミナー、書籍、論文などで「栄養学」を学んでいる、栄養オタクトレーニーです。
運動中に「痙攣・攣り」を経験したことありませんか?
運動中に一回でも「痙攣・攣り」が起こると、その日はもう”ダメダメ”になってしまいますよね。
実際、アスリートの70%は、痙攣・攣りを経験しているそうです。
十分なパフォーマンスを発揮するためにも、痙攣・攣りの予防、改善方法を知っておいて損はないと思います。
この記事では、痙攣・攣りの予防・改善方法をエビデンスベースで解説しています。
痙攣・攣りでつらい思いをしないためにもぜひ、最後まで読んでみてください。
→ 参考論文「運動中の筋肉のけいれん:原因、解決策、および残りの質問」
■痙攣・攣りが起こるメカニズムとは?
たくさん”汗をかく”環境下での運動中
ボディビルなどのコンテストで、一時的に筋肉を”収縮し続ける”場面
こんな環境下になったときに「痙攣・攣り」は起こりやすくなります。
ぶっちゃけ、「痙攣・攣り」が起きてしまったら、迅速に治す・対処するのはかなり難しいです。
実際、一度痙攣・攣りが起きてしまうと、クセみたいになって、その日はもう使い物にならなくなりますよね?
ですが、「改善」は不可能でも「予防」の観点で見ると、栄養学的アプローチがある程度は可能になります。
まずは、筋肉の痙攣のメカニズムから理解していきましょう⁉
◎痙攣のメカニズム
筋肉の痙攣を一言で説明すると、何らかの原因により、筋肉や腱が伸びたまま固まってしまって起こる症状のことです。
とは言ったものの、痙攣の正確なメカニズムは、今の科学でも明確になっていません。
さまざまな仮設が立てられて研究はされていますが「これだ!」という答えには、未だたどり着いていません。
そこで、よく言われる比較的エビデンスレベルの高い要因を3つ紹介します。
◎ ①電解質の不足
運動・トレーニングをすることにより、汗をかきます。
そうすると、汗とともにナトリウムなどの電解質も一緒に排出されてしまうのです。
このタイミングで、電解質の含まない水分を大量に補給すると、体から出ていく電解質より、入ってくる電解質のほうが少ないので、体内のミネラルのバランスが崩れて筋肉の痙攣が起きてしまいます。
電解質が少なくなると、痙攣が起こる理由は、筋肉の収縮には電解質が使われているからです。
筋肉が収縮するときは、筋小胞体というところから、カルシウムイオンが放出され、このとき、カルシウムが使われているのです。
他にもマグネシウム、カリウム、ナトリウムなども使わています。
ですので、電解質が不足すると、筋肉が収縮しにくくなって、痙攣が起こるということです。
→ 関連記事「カルシウム不足は筋力を低下させる」
◎ ②一定時間の血行不良
何かしらの原因で筋肉が圧迫され、一定時間の血行不良が起きたとします。
このようなときが、痙攣が起きやすい状況です。
筋肉が冷えていると、痙攣を起こしやすいと言われています。
血行不良による痙攣発症も、おおもとは、筋肉に電解質が行き届かないことが原因で起こります。
◎ ③神経学的な要因
高ぶった中枢神経のままでは、筋肉のコントロールができず、筋肉が伸びたまま収縮できなくなり、痙攣を起こします。
筋肉を収縮 → ゴルジ腱器官が抑制される → 中枢神経系を抑制させる働きが弱くなる
疲労 → 筋紡錘の活動が増える → 中枢神経系を興奮させる
その結果、筋肉の収縮が制御しにくくなり、痙攣を引き起こすということです。
■痙攣・攣りの栄養学的アプローチ
痙攣・攣りを栄養学的にアプローチできるのは「予防」の観点です。
実際、痙攣・攣りが起きてしまったあとは、栄養摂取ではどうにもなりません。
痙攣・攣りが起きてしまったときの対処方法は後ほど解説するので、まずは「予防」の観点を栄養学的にアプローチします。
◎痙攣・攣りを予防するなら「電解質」
「痙攣・攣りに電解質は関係ない」
このように言われることもありますが、実際、電解質は痙攣・攣りに効果的です。
『筋痙攣が起きる直前に、ミネラルウォーター、経口補水液を摂取させる』
このような研究がありました。
結果は、経口補水液のほうが痙攣が起きにくいというものでした。
つまり、電解質の摂取は、痙攣の予防が期待できる1つのアプローチと言えるのです。
ですので、運動前、運動中、コンテストのポージングの前は、電解質を含む飲料をこまめに摂取するようにしましょう。
◎電解質で「改善は不可能」
電解質の摂取で「予防は可能」ですが、痙攣が起こったあとに摂っても「改善は不可能」です。
なぜなら、電解質が筋肉に運ばれるまでに時間がかかるからです。
筋肉の痙攣が起きてから、電解質を摂取しても意味がないので、運動の前・中はこまめに電解質を含むドリンクを飲むようにしましょう。
◎やりがちだけど間違った処置方法
運動・スポーツの怪我では応急処置として「RICE処置」というものがあります。
☆「RICE処置」
R:Rest(安静)
I :Icing(冷却)
C:Compression(圧迫)
E:Elevation(挙上)
一般的な怪我は、炎症が原因なのでIcing(冷却)をすることで、炎症を抑えることができます。
ですが、痙攣は炎症ではなく、筋肉が伸びたまま固まった状態なので、冷却をすると余計に筋肉が固まってしまい、回復までに時間がかかってしまいます。
ですので、痙攣が発症したら、その部位を温めるという方法を取りましょう。
決して、冷やしてはいけません。
■まとめ【栄養学的には予防はできる】
今回は、痙攣・攣りを予防する栄養学的アプローチを解説しました。
結論は、予防策はあるが、迅速な改善策はない
これにつきますね。
そして、予防方法はこまめな電解質の摂取です。
筋肉の痙攣・攣りが起きやすい人は、運動、トレーニング前・中のに積極的に電解質を摂ると良いでしょう。